岡山県 津黒山

涼やかな渓谷道から笹原広がる明るい山頂へ

 中国山地の峰々は、標高が1000m前後と低く、夏期には蒸し暑くて登山には適しない山も多い。けれどもこの津黒山(つぐろせん・1117.8m)は、山頂一帯が風の吹き抜ける草原状となっており、思いのほか登りやすい。さらにスタートを冷気漂う山乗渓谷とすれば、より一層涼しく、変化のある山歩きを楽しむことができる。
 山名の「つぐろ」はこの地方の方言で、稲群のことを言う。麓から見上げる山容は確かにそれを思わせるような、こんもりとした優しい姿形の山である。

津黒山
津黒遊歩道を歩いて基幹林道へ向かう
●アプローチ

 公共交通機関では不便であり、マイカーを利用する。米子自動車道湯原インターで下車、北に進んで国道482号に入り、中和集落から山乗渓谷を目指す。渓谷入口には駐車場がある。

●コース

 山乗渓谷入口から山乗千手観音堂の前を通り、そうめん流しロッジの脇を抜けると右手に不動滝入口が現れる。進んだ先の暗い谷間に、二筋で流れ落ちる不動滝は神秘的であり、今も篤い信仰の対象とされている。
 少し戻って渓谷遊歩道に入ると、不動滝の上流となる山乗川を間近に見る左岸に、歩きやすい歩道が400mばかり続く。周囲にはブナなどの自然林が茂り、気持ちの良いところだ。ちなみにこの山乗川は岡山県を代表する沢歩きコースでもあり、渓谷遊歩道の先から入渓して上部の砂防堰堤のあたりまで、地元岳人にはよく遡行されている。それほど難しくない小滝を次々と越えるもので、沢歩きの楽しさを満喫させてくれる。
 渓谷遊歩道はやがて沢沿いを離れ、舗装された林道のところで終わる。その林道を横切って、さらに反対側に続く津黒高原遊歩道へと入っていく。これは山腹を横切る緩やかな道であり、途中にはあずまやも設置されている。その先でやはり舗装された基幹林道にぶつかるので、これを右に向かう。スキー場を見下ろしつつしばらく歩くと、左側に展望台にもなっているあずまやが現れる。そのすぐ先が津黒山登山口だ。
 出だしからしばらくは、スギやヒノキの人工林の中の急登が続く。一旦傾斜の緩んだ先から、周囲は次第に雑木となり、やがて明るい草原状の笹原が広がる山頂部の一角に出る。なだらかな小ピークを過ぎて登り詰めると、360度の眺望が広がる津黒山頂上だ。

津黒山
山頂付近は明るい笹原が広がる

 北西には蒜山三座の向こうに、大きな伯耆大山の姿を望むことができる。また南側には白髪山、山乗山の頂上が連なるが、残念ながら道は拓かれておらず、一般には歩くことはできない。
 下山は往路を引き返す。最後の渓谷遊歩道の部分はカットして、林道を歩いたほうが早い。

DATA

交通●アプローチ参照
2万5千図●富谷西・下鍛冶屋
参考タイム●山乗渓谷入口(10分)不動滝(1時間)津黒山登山口(1時間)津黒山(45分)津黒山登山口(50分)山乗渓谷入口
問い合わせ●真庭市役所中和支局☎0867-67-2111

※山行日は2011年夏、DATA等は2012年5月時点のものであり、現在は状況が大きく変わっています。出向く際には、必ず最新情報を事前にご確認ください。