愛媛県 番匠谷

石鎚山の南面を流れるナメと釜が美しい沢

 思いのほか険しい姿を見せる四国の山々。渓谷の切れ込みも深く、赤石山系や剣山山地、鬼ヶ城山系の滑床渓谷などが登られている。その中でも西日本最高峰である、石鎚山の一帯には遡行価値の高い沢が多い。アクセスが良く、滝の多い北面の沢の人気が高いが、南面の面河川流域も静かな沢登りが楽しめるエリアである。

 ところでガイドブックなどでは、面河川本谷はしばしば取り上げられるものの、今回紹介する番匠谷についてはほとんど記載がない。なぜかと言うと、この沢の源頭部には石鎚スカイラインという観光道路が横切っていて、1965年から始まったその造成工事により、谷筋が大量の土砂に埋もれてしまったからなのだ。
 しかし工事が終了して、すでに40年以上。出合からスカイラインまでの間に、大きな堰堤が3つと、所々に工事の名残りを思わせる不自然な岩塊は残るものの、土砂はほとんど流れ去って、谷は自然の姿を取り戻してきている。登攀的要素には乏しいが、泳ぎを要する釜やシャワークライミングをする小滝の点在する、夏向きの楽しめる沢として、遡行者の姿も増えているようだ。

番匠谷
シャワークライミングとなる場面も多い

 番匠谷のアプローチは、石鎚スカイラインの御来光の滝展望所の駐車場から。車道を土小屋方向に歩き、左手にあるカーブミラーを目印に面河川本谷に向けて急な斜面を下る。踏跡は明瞭だ。
 下りきったところが、面河川本谷の堰堤の上。そこから平坦な河原を歩くと、番匠谷の出合だ。番匠谷に入るとすぐにナメ床の美しい渓相となり、青い水を湛えた大きな釜が連続する。

番匠谷
泳ぐ釜が所々で現れる

 この谷での大きな滝は2つ。ひとつめは出合から間もなくで現れる傾斜の強い2段滝で、右岸から高巻く。上部では傾斜の強い岩を登るので注意しよう。二つめは谷の中間部にある、15mほどの滝で、こちらは右壁を登る。パーティに初級者がいる場合は、いずれもロープを使用した方が良い。

番匠谷
2段の大滝。右岸から高巻く

 その他にもトロや小滝、ゴルジュなどが点在して飽きることがない。遡行の最後は、堰堤状になっている石鎚スカイラインの道路の下を、長い水路の穴を潜り抜けて反対側に這い上がる。味気ないとも言えるかもしれないが、ちょっと変わった面白い終了点である。

番匠谷
水路を潜り抜けて終了

DATA

日帰り◎歩行時間=6時間20分
アクセス●松山自動車道松山ICより国道33号を久万へ向かい、県道12号から石鎚スカイラインに入って御来光の滝展望所駐車場へ。車が2台のときはあらかじめ番匠谷横断点に1台を停めておくと終了後の車道歩きを省ける。なお、石鎚スカイラインは夜間は通行止めになるので注意すること。公共交通機関ならばJR松山駅からJR四国バスで久万中学校前へ行き、伊予鉄南予バスの久万営業所から土小屋行きのバスに乗るが、とても不便。
参考タイム●御来光の滝展望所駐車場(30分)面河川本谷の堰堤(20分)番匠谷出合(3時間30分)砂防指定地の標識(1時間15分)石鎚スカイライン横断点(45分)御来光の滝展望所駐車場
2万5千図●筒上山
問い合わせ●久万高原町役場面河支所☎0892-58-2111、久万高原土木事務所☎0892-21-1210(石鎚スカイラインの通行時間の問い合わせ先)
アドバイス●泳ぎやシャワークライミングになる場面が多々あるので、相応の準備をすること。夏の暑い日の遡行に向いている。

※山行日は2012年夏、DATA等は2014年5月時点のものであり、現在は状況が大きく変わっています。出向く際には、必ず最新情報を事前にご確認ください。