広島県 比婆山連峰
古事記の舞台だった峰々を巡る
中国山地の比婆山(1254m)連峰は、広島と島根の県境に位置し、かつてたたら製鉄の行われていた六ノ原を取り囲んでいる。40年ほど前に類人猿「ヒバゴン」の目撃例が相次いで話題を集めたが、今では山中に車道が延び、未知の生物が生息するとは考えにくいまでに開発が進んでしまった。それでも稜線上には、国指定天然記念物のブナの原生林が広がり、豊かな自然も残っている。
標高1100mを超えるピークは9座あるが、今回は六ノ原にあるひろしま県民の森公園センターを起点に、8座を巡る周回コースを紹介する。
公園センターから車道を由木方面に進むと、左手に牛曳山の登山口が現れる。そこから登山道に入り牛曳滝を越えると、最初のピークである牛曳山の頂上。稜線を北西に行けば2つめのピークとなる伊良谷山、さらに進むと3つめのピークである、毛無山の頂上に着く。明るい展望ポイントだ。
毛無山から出雲峠に下り、暗い針葉樹の間を抜けると、ブナの木が目立つ尾根道となって、4つめのピークである烏帽子山の頂上に出る。
比婆山に続く稜線を左に見送ってジグザグの道を下ると、広島と島根を結ぶ峠道が交わる横田別。その先が明るい草原状の大膳原だ。水場、トイレが完備したキャンプ場は北側にある。清潔な避難小屋も設置されている。
大膳原からは西にそびえる、5つめのピークとなる吾妻山に向かう。正面の道を登り詰めると、展望の良い頂上に出る。下りは南ノ原経由にすると変化があって面白い。
続いて烏帽子山方向に登り返し、分岐を右に進むと、6つめのピークとなる比婆山の頂上に着く。この比婆山の、別名は御陵。古事記に記される、伊耶那美命が葬られた「比婆の山」がこの場所だという言い伝えの残る、神聖な山頂だ。
比婆山を過ぎておっぱら越えから登り詰めると、7つめのピークになる池の段。往復15分ほどの南峰の方が標高は高いので、足を運ぶと良い。
東に下って登り返すと、最後のピークになる立烏帽子山の頂上。連峰中の最高峰である。あとは駐車場経由で六ノ原に続く登山道へ進むと、展望園地を通って公園センターに近い林道に降り立つ。
なおコース上のあちこちに、古事記に関連した見所を示す案内板が立てられている。途中でこれらを見学しながら歩くのも興味深いだろう。
DATA
1泊2日◎歩行時間=1日目 4時間50分、2日目 6時間5分
アクセス●JR芸備線備後落合駅からタクシー約20分ひろしま県民の森だが、列車の本数は少ない。マイカーの場合、大阪方面からは中国道東城ICから国道314号を、広島方面からは中国道庄原ICから国道183号経由で国道314号を北へ向かい、ひろしま県民の森を目指す。駐車場は700台利用可、無料。
参考タイム●公園センター(15分)牛曳山登山口(2時間30分)毛無山(30分)出雲峠(1時間)烏帽子山(35分)大膳原(50分)吾妻山(1時間10分)大膳原(1時間)比婆山(1時間)池の段(20分)立烏帽子山(1時間45分)公園センター
2万5千図●比婆山
問い合わせ●ひろしま県民の森公園センター☎0824-84-2011、奥出雲町地域振興課☎0854-54-2524(大膳原野営場)
メモ●公園センターでは日帰り入浴も可能。500円。
アドバイス●紹介したコース以外にも登山道は多い。分岐には案内標識があるので、確認しながら進むこと。
※山行日は2011年秋と2012年秋の2回、DATA等は2013年8月時点のものであり、現在は状況が大きく変わっています。出向く際には、必ず最新情報を事前にご確認ください。