四国 石鎚山

静かにゆっくり歩く雪の名山

 西日本最高峰の四国山地石鎚山は、古くから山岳信仰の対象となっている山である。7月始めの山開きの時に、白装束の信者が数珠つなぎになって鎖を伝い登る写真を目にすることも多いだろう。
 その石鎚山も、12月に入ると雪に覆われはじめ、山を歩くのは登山者ばかりとなる。しかしこの時期は積雪も多くはなく、名物の鎖場も巻き道からかわせば困難さも少ない、登りやすい雪山といえるだろう。
 入山は標高差850mを、わずか8分で一気に登ってしまう石鎚登山ロープウェイを利用。降りて林道をたどると、お土産物屋の立ち並ぶ広場へと飛び出す。広場奥に祀られた石鎚神社成就社にお参りし、神門を潜ればいよいよ登山道の始まりだ。

石鎚山
白い樹氷と緑の笹原の対比がきれい

 出だしからしばらくは下り坂だが、鞍部の八丁からは階段の急登が続く。前社森を左から巻いて、茶屋前を過ぎると夜明峠へ。前方に荒々しい北壁を見せてそびえる石鎚山は、威圧的なたたずまいだ。
 続く一の鎖を右から巻いて、鳥居の立つ二の鎖小屋下の右手が、キャンプ指定地となっている。
 翌朝はできるだけ早い時間の出発を目指そう。頂上に続く二の鎖、三の鎖とも巻き道からかわすが、絶壁上に歩道が渡された箇所もあるため、雪が積もっているときは細心の注意が必要だ。
 やがて冷たい西風が吹きつける稜線に出ると、あとは頂上山荘の石垣の下をたどれば石鎚神社前の広場となった、弥山山頂に出る。一般にはここが頂上とされているが、最高点である天狗岳もぜひ往復しよう。

石鎚山
弥山頂上から望む氷雪に覆われた天狗岳

 天狗岳へは、急な鎖場の下りから始まる。続けて稜上を少し進み、南側斜面の踏跡へ。頂上手前で再び稜上に戻るが、傾斜は緩いものの岩場となっており歩きにくい。特に風の強い日は要注意。たどり着いた天狗岳の頂上は、遮るもののない360度の展望が広がっている。

石鎚山
岩稜が続く弥山から天狗岳に続く稜線

 往路を慎重に弥山、そして二の鎖小屋下まで引き返したら、下山はロープウェイを使わず、土小屋回りで西之川まで歩いてみよう。四国の山深さを感じ取ることのできる、貴重なコースだ。
 まずは北壁の下を東へ向かう、トラバース道へ向かう。東稜基部で尾根に出ると、明るい南寄りを進む箇所が多くなり、軽快に足を進めることができる。

石鎚山
瓶ヶ森を望みつつ土小屋へ向かう

 やがて遥拝殿の立つ土小屋に到着。車道を下って、大きな駐車場の一角から西之川に下る道に進む。
 それからは展望のない、樹林の中の長い道を淡々と下っていく。雪は少ないが、凍結した沢筋を横断する箇所もあるので慎重に。ツナノ平、岩原の分岐を過ぎて、廃村の西之川集落を通り抜ければ、車道へと合流する。あとは20分も歩けば、石鎚ロープウェイ前に戻る。

DATA

1泊2日
アクセス◎JR予讃線伊予西条駅からバス55分で石鎚ロープウェイ前。マイカーの場合は松山自動車道いよ西条ICから国道11号、194号、県道24号を通って石鎚ロープウェイ前へ(有料駐車場あり)。山麓下谷駅より石鎚ロープウェイ8分で山頂成就駅へ。
参考タイム◎山頂成就駅(30分)成就(3時間)二の鎖小屋(50分)弥山(30分)天狗岳(30分)弥山(30分)二の鎖小屋(2時間)土小屋(2時間20分)岩原(1時間)西之川(20分)石鎚ロープウェイ前
2万5千図◎石鎚山、瓶ヶ森
問い合わせ◎せとうちバス●0898-23-3450、石鎚登山ロープウェイ●0897-59-0331
アドバイス◎石鎚山頂上山荘は冬期の営業を行っておらず、頂上避難小屋は物置のようで窮屈であり不快なものだ。従って宿泊は二の鎖小屋下のキャンプ地に幕営するのがよい。また土小屋方面に回らずに成就コースから山頂を往復するだけの場合、朝早い時刻のロープウェイを利用すれば日帰りも可能。始発は8時40分。
山行日◎2008年12月27~28日

※山行日は2010年12月、DATA等は2011年10月時点のものであり、現在は状況が大きく変わっています。出向く際には、必ず最新情報を事前にご確認ください。