中国地方最高峰 大山

日本海を望む山陰の雪山の定番

 先の年末年始の山陰地方の豪雪(注・2010年12月31日からの山陰豪雪のこと)は記憶に新しいところだが、そこまでの大雪でなくとも、中国地方最高峰である山陰の名峰・大山の冬は雪が深く、また天候も厳しい。1700mをわずかに越えるだけの標高でありながら、その厳しさゆえに多くの遭難事故を引き起こした山でもあり、かつては「東の谷川、西の大山」といわれ、魔の山・谷川岳と並び称されたこともあると聞く。
 その大山も、冬型の気圧配置が緩む2月下旬以降になると明るい表情を見せる日が増え、多くの登山者を迎えるようになる。しかし気象条件に大きく左右されるのがこの山の特徴であるので、十分な情報収集をしてから、実際の登山に赴くようにしたい。
 さて夏冬通して最も一般的な大山登山コースである夏山登山道は、大山寺参道から右に進み、大山寺橋を渡った先、左手の標識が目印となる。続く四つ角を左に向かうと、阿弥陀堂横のベンチのある平坦地に出るが、ここからが本格的な登山の始まりだ。
 周囲にブナ、ミズナラの美しい樹林の立ち並ぶ中を、ペース配分に気を配りつつ登っていく。段差の大きな階段が続き体力を削ぎ取られる所だが、雪が多ければ程良い高さのステップが刻まれている場合が多く、かえって歩き易いともいえる。

大山
夏山登山道四合目付近のブナ林

 急になる四合目前後をひと頑張りすれば五合目の小平坦地へと出る。そこからわずかに登った先、左下に下るのが下山時に辿る行者コースだ。さらに20分ばかり登ると、避難小屋が立つ六合目へと出る。荒々しい大山北壁の展望ポイントでもある。
 そしてここからがこのコースでも最も爽快なところだ。気持ちの良い雪尾根を周囲の展望を楽しみつつ登っていくのだが、状況を判断しつつ必要に応じて、ピッケル、アイゼンの完全装備を身につけて慎重に上に向かおう。やがて傾斜が緩んでくると八合目であり、ここからはなだらかな傾斜の山頂台地を、東寄りを目指して進んでいく。前方に頂上避難小屋の姿が見えてくると、頂上はもう目と鼻の先だ。

大山
夏山登山道八合目付近の雪尾根

 小屋の左側を回りこんで登ると、石積みの山頂標識が設置された弥山頂上に到着する。遮るものはなく、展望は抜群だ。特に北側に広がる日本海の海原と、左から延びる島根半島、その手前に大きな弧を描く弓浜半島の景観は素晴らしい。

大山
弥山から見た頂上避難小屋

 さらに東を向くと、切れ落ちた稜線の向こうに大山の最高峰である剣ヶ峰がそびえ立っている。しかし残念ながらこの稜線は近年崩落が著しく、現在は通行禁止となっている。

大山
大山から見た最高峰・剣ヶ峰

 展望を楽しんだ後は下山にかかるが、八合目までは風に向かって進むため、防風対策には特に気を配りたい。六合目まで戻ると一安心で、さらに下って行者コースへと進む。出だしが急であり、足元に気を配りつつ下っていくと、次第に傾斜が緩み、大きく開けた元谷へと出る。右手頭上に広がる大山北壁が圧倒的だ。

大山
元谷から見上げた大山北壁

 広い元谷を渡った対岸からは、治山道路を辿ろう。下宝珠越入口を示す標識を目印に治山道路を離れ、左へ下っていくと、間もなく大神山神社の境内へと出る。ここからは今日の登山を振り返りつつ、観光客も歩く参拝道を下っていくと、出発地点の大山寺参道入口へと戻る。

DATA

前日泊日帰り
アクセス●JR山陰本線、伯備線米子駅からバス55分で大山寺。マイカーの場合は米子自動車道米子ICから大山観光道路(県道24号)経由で大山寺へ。駐車場はスキー場のものを利用する。約800台。土日祝日1000円、平日500円。チェーンまたはスノータイヤ必携。
2万5千図●伯耆大山
問い合わせ●日本交通㈱米子営業所℡0859-33-9116
登山力◎ピッケル、アイゼンワーク必要
アドバイス●降雨後に冷え込むと六合目から上がアイスバーン状になることがある。10本爪以上のアイゼンとピッケル必携。防寒、防風、日焼け対策もしっかりとすること。
メモ●宿泊の問い合わせは大山町観光案内所℡0859-52-2502へ。

※山行日は2008年3月、2009年3月、2010年3月の複数回、DATA等は2011年1月時点のものであり、現在は状況が大きく変わっています。出向く際には、必ず最新情報を事前にご確認ください。