鳥取県 阿弥陀川から宝珠山

大滝と出会う静かな渓谷歩きコース

 東西南北、それぞれ異なった表情を見せる山陰の大山。中でも東面は最も地形が複雑で、山稜には多くの渓谷が切れ込んでいる。沢登りや渓谷歩きを楽しめる谷も多いが、あまり入渓者はいないのが実情だ。
 その中でもここで紹介する阿弥陀川は、古い登山道が沢沿いを通ることもあって比較的よく歩かれている。核心部の阿弥陀滝を巻けば困難な箇所はなく、沢登り初級者でも余裕を持って楽しむことができるだろう。

宝珠山
下から見上げた阿弥陀滝
●アプローチ

 JR米子駅から日本交通バスで大山寺へ向かい、そこから徒歩1時間、またはタクシー(要予約)で川床へ。マイカー利用ならば、川床に車4~5台分の駐車スペースがある。

●コース

 川床から大休峠に向かう登山道に入り、橋を渡るとすぐに阿弥陀川コースを示す標識が現れるので、そちらに進む。沢に下りて出だしは右岸を進むが、程なく踏跡は流れの左右を交互に渡る。踏跡のある箇所には赤テープが付けられているし、足元が渓流足袋ならば思い切って流れの中を進んでも良いだろう。目立った滝はなく、特に困難な箇所もない。
 ポイントは2ヶ所で、東谷、そして雄滝のかかる支流の二俣ではそれぞれ右に入る。
 やがて目の前に、落差45mの堂々たる阿弥陀滝が姿を現す。水量は少なめで威圧感はあまりなく、周囲は明るくて小休止には最適の場所だ。
 この滝を巻く場合は、まず右手のガレを登る。右から小尾根が近づいてくると踏跡は明瞭になる。傾斜が強くなる辺りで尾根を離れて左に向かうと登山道にぶつかるので、それを右に進めば宝珠山(ほうじゅやま・1183m)の頂上。
 いっぽう滝を登る場合は右手のリッジから。50mロープでは1ピッチで抜けるのは難しく、中段のテラスでピッチを切ることになる。上部は流水のすぐ右を、水しぶきを浴びながら登る。グレードはIV程度で見た目ほど難しくはない。

宝珠山
阿弥陀滝上部の登攀

 登り切ると広い河原となり、右岸に現れる「宝珠越」を示す古い標識を目印に左岸の沢状を登って下宝珠越へ。そこから北に進めば宝珠山の頂上へと出る。
 宝珠山は大山の天狗ヶ峰付近から延びる宝珠尾根の末端に位置する。メインコースからは外れていて、登られることの少ない不遇なピークだ。頂上からは北へ向けて美しいブナ林の中を下ると、やがて中の原スキー場に出るのであとは適当に歩いて車道へ戻る。

宝珠山
新緑のブナ林を下る

DATA

交通●アプローチ参照
2万5千図●伯耆大山
参考タイム●川床(1時間)東谷出合(30分)阿弥陀滝(1時間15分)宝珠山(45分)中の原
※滝を登る場合はプラス1時間程度
問い合わせ●大山町役場大山支所☎0859-53-3311、日本交通バス☎0859-33-9116、日興タクシー☎0859-54-2101
アドバイス●阿弥陀滝を登る場合は登攀装備一式(各種ピトン類を含む)を持参すること。また滝の上からさらに沢をつめることもできるが(沢は剣谷と名前を変える)単調なガレ沢で面白みはない。

※山行日は2009年5月10日、DATA等は2011年5月時点のものであり、現在は状況が大きく変わっています。出向く際には、必ず最新情報を事前にご確認ください。