岡山県 蒜山三座
おおらかな稜線の続く雪の縦走路を歩く
中国地方の雪山で、まず第一に取り上げられるのは、アルペン的な風貌が際立つ大山。続いて広大な雪原の広がる、氷ノ山だろう。
今回紹介する蒜山も、おおらかな雪の稜線が続いて、この2座に劣らない魅力を持っているし、アプローチも良いが、なぜか人気は今ひとつ。けれどもその分、自力でラッセルをしてルートを切り拓く、雪山登山本来の楽しみ方ができる山だと言える。また中国地方では数少ない、雪の縦走登山ができる場としても、貴重な存在である。
蒜山高原バス停から上蒜山スキー場へ向けて歩き、スキー場手前の段差を上がって牧草地の斜面へ。トレースがなければここからルートファインディングが必要であり、進路を見定めて上蒜山から南西に延びる尾根に取り付く。しばらく樹林の中を行くが、標高950mで右の尾根を合わせた先は、左手の樹林からせり出した雪の尾根を進む。
蒜山高原の展望を背にして槍ヶ峯を過ぎ、雪の深さが増した尾根を登り詰めると、左右に稜線が伸びるピークに出る。一帯は木立が多くて展望がなく、標識も雪に埋もれているが、ここが上蒜山の頂上となる。
上蒜山からは東へ進む。左右の枝尾根に踏み込まないように気を付けて鞍部まで下り、あとは稜線を忠実に登ると、中蒜山避難小屋の横に出る。そのすぐ右手が中蒜山の頂上だ。展望は良く、越えてきた上蒜山の全容を見渡すことができる。
コース上での宿泊は、この中蒜山避難小屋(収容5~6人)か、テントの場合は下蒜山方向に下った、フングリ乢付近の樹林の中が良い。
フングリ乢からは、北から東へ回り込むように稜線をたどる。右手に大きな雪庇が発達した区間が続くので、特に注意が必要。登り切ると最後のピークである、下蒜山の頂上だ。
下山は稜線をさらに東へ向かうが、雲居平の下までは稜線の左右に、雪崩の発生しやすい斜面が広がる。絶対に稜線を外さないように気を付けて樹林帯まで下り、後は雪に隠れた登山道を探しつつ、犬挟峠へと向かう。
行程を通して岩場はなく、標高が低くて雪も軟らかい。雪山としては初級者向けだが、トレースは期待できず判断力が求められるコースだ。ワカンで歩くのが一般的だろうが、全体に傾斜は緩く、スノーシューもとても有効である。
DATA
1泊2日◎歩行時間=1日目 5時間45分、2日目 3時間40分
アクセス●JR姫新線中国勝山駅からバス1時間15分で蒜山高原。マイカーの場合は、米子道蒜山ICから上蒜山スキー場へ。駐車場は500台利用可、無料。下山後は犬挟峠からタクシーで蒜山高原、または上蒜山スキー場へ。いずれも約30分、3,500円程度。要予約。
参考タイム●蒜山高原(30分)上蒜山スキー場手前(3時間)上蒜山(1時間30分)中蒜山(45分)フングリ乢(2時間)下蒜山(1時間40分)犬挟峠
2万5千図●蒜山
問い合わせ●真庭市コミュニティバス(真庭市市民課)☎0867-42-1112、ヒルウン交通(タクシー)☎0867-66-5570
メモ●休暇村蒜山高原(☎0867-66-2501)で日帰り入浴が可能。500円。
アドバイス●逆コースも可能だが、下蒜山八合目の急斜面が登りになるため所要時間は増える。中蒜山は三座の中では冬の登山者が比較的多い。塩釜冷泉からの道はトレースがあることも多く、エスケープルートとして利用できる。
※山行日は2011年1月から2013年1月にかけての数回、DATA等は2013年12月時点のものであり、現在は状況が大きく変わっています。出向く際には、必ず最新情報を事前にご確認ください。