岡山県 血吸川
初級者に最適な岡山県南部の沢登りコース
岡山県の南部に、伸びやかに広がる総社平野。その北側は一気に標高を上げて、海抜300mを超える吉備高原となっている。中でも古代山城の遺構が残る鬼ノ城山の一角は、まるで航空母艦のように高原から平坦地がせり出し、特徴的な地形を見せている。
その地形のせり出しを形作る渓谷が、鬼ノ城山の東から北へ回り込む血吸川である。上から見下ろす切れ込みは深く、沢筋全体に露岩が目立って荒々しい。遡行対象にもなっていて、岡山近隣の登山愛好者には、初級者向けの沢登りコースとして親しまれている。
血吸川へは、鬼ノ城東駐車場から歩きはじめる。すぐ先の鬼ノ城・岩屋登山道分岐は右へ。間もなく現れる、橋の架かる沢が血吸川であり、ここから入渓する。
入渓直後は暗いが、すぐに開けた明るい渓相に変わる。岩盤の発達した景観は、ここが市街地から間近なことを忘れるほどの、雄大さを感じさせるものだ。
沢筋の傾斜は全体に緩く、ナメを軽快に登っていくことができる。途中、岩が積み重なった5m滝を越えた先もナメが連続する。
やがて現れる、大きな滝が核心部。実際は一つの滝ではなく、ナメ滝が続く連瀑帯だ。けっして難しくはないが滑りやすいので、慎重に通過する。中段の滝は傾斜が強くて左から、高度感の出る上段は右から巻き気味に登る。
その先のジグザグのナメを登るとヤブっぽくなるので、左岸から巻くように越える。続けて現れるゴルジュには小滝が連なるものの、いずれも容易で難なく突破可能だ。
さてここまでナメ、滝、ゴルジュと沢登りの面白さを味わって、もっと登りたい気分になるところだが、残念なことにすぐ先の石積み堰堤を越えると、早くも遡行終了点だ。左右には水田が広がり、登ってきた血吸川の流れは、その中に吸収されてしまう。傍らに立つ「アテツマンサク自生地」の看板から歩道が続いて、それをたどると舗装された市道に出る。右に向かって岩屋登山道を下るのが、出発点に戻る最短コースとなる。
ところで吸血性の不快な生き物がいると誤解されがちな血吸川だが、その名称は伝説によるものだ。かつて鬼ノ城山には、温羅という鬼が住んでいて、退治に向かった吉備津彦の放った矢が温羅の目に当たり、たくさんの血が流れて血吸川になったという。実際はこの沢には、ヤマビルの類は棲息していないのでご安心を。
DATA
日帰り◎歩行時間=2時間30分
アクセス●岡山自動車道岡山総社ICから国道180号を東へ進み、小山交差点で左折、国道429号へ。約1.5km進んで左の県道271号に入り、血吸川沿いの道を右折すると鬼ノ城東駐車場に出る。電車の場合はJR吉備線服部駅から、徒歩約60分で鬼ノ城東駐車場に着く。
参考タイム●鬼ノ城東駐車場(10分)鬼ノ城・岩屋登山道分岐(10分)血吸川に架かる橋(1時間30分)市道(30分)鬼ノ城・岩屋登山道分岐(10分)鬼ノ城東駐車場
2万5千図●総社東部
問い合わせ●総社市鬼城山ビジターセンター☎0866-99-8566
メモ●遡行終了点の南側にある鬼ノ城山は、日本の城の中でも最も古いとされる古代山城であり、様々な遺構が復元中である。市道に出たところで左に向かえば、約15分で鬼城山ビジターセンター。そこから角楼〜西門〜南門と歩いて、東門から鬼ノ城・岩屋登山道分岐へ戻ることもできる。ビジターセンターからの所要時間は約40分。
アドバイス●初級者に適した沢登りコースだが、経験者との同行が望ましい。渓流シューズとヘルメット必携。
※山行日は2013年以前の数回、DATA等は2014年3月時点のものであり、現在は状況が大きく変わっています。出向く際には、必ず最新情報を事前にご確認ください。