2019年に山と溪谷社から出版された『関東百名山』では5人の執筆者のうちの1人に選ばれ、100山中の24山を担当しました。そのページに掲載された写真の多くは、2017年秋から2018年秋の、約1年間に集中して撮影。その一部を、紹介します。

001 群馬県・朝日岳(1945m)

100の山のトップであり、このページの写真が冴えないと、全体の印象まで悪くなってしまうので責任重大です。かなり気合いを入れて写真撮影に出向きました。
紹介するコースは、増水事故の多い宝川からの道は除外。蓬新道は、登山口が関東ではない新潟県なので不適。谷川岳は2番目の山として紹介するため、そちらからの縦走も望ましくないし、土合からのピストンでは途中に宿泊場所がなく、日帰りするには長時間すぎます。
その結果、登りは湯檜曽川沿いの新道を経由しての白樺尾根に絞り込まれましたが、ここも7月頃までは残雪の多い難コースで、紹介には適しません。そのため取材は、確実に残雪がなくなっているであろう秋に行ないました。
仕上がった写真は少々秋山感が強いものの、空気は澄み渡り、遠くの山までしっかりと写すことができてほっとしました。

002 群馬県・谷川岳(1977m)

もう何度も登っている山ですが、そういう山ほど、あまり良い写真が手元にありません。そのため、あらためて写真撮影に出向くことにしました。
秋の紅葉の時期も良い山ですが、前ページの朝日岳を秋と決めていたため、こちらはグリーンシーズンにしたいと考えました。
そこで「谷川岳の日」である、7月2日に取材を実施。梅雨の最中ではあったものの、その日はすっきりと晴れ渡って、夏山らしい写真が撮れました。

004 群馬県・白砂山(2140m)

秋雨が続いた9月に、予想天気図を詳細にチェックした結果、1日だけ晴れ間が広がると予想。その日に取材に出向きました。しかし森林限界を抜け出た先で、見上げた山頂は雲の中。
頂上に着いても真っ白で何も見えず、予想は間違いだったかと肩を落としたものの、ギリギリまで粘ってみることに。すると1時間後には一気に雲が消え、視界も広がって何とか希望通りの写真を写すことができました。

028 栃木県/群馬県・鬼怒沼山(2141m)

初日は奥鬼怒温泉郷の日光澤温泉に宿泊。翌日は深い原生林の中の道を登り、池塘が点在する鬼怒沼へ向かいました。
しかし鬼怒沼までは登山者が多いのですが、鬼怒沼山まで登る人は稀です。尾瀬沼に向かう道をたどり、最後は薄い踏跡を伝ってたどり着いた頂上は、ブッシュに覆われて眺望皆無。大清水への下山路も、なかなかの急峻な道でした。
当日は青空というわけにはいかず、ややどんよりした写真になってしまったのが心残りです。

038 栃木県・日留賀岳(1849m)

039の高原山の取材後、那須塩原温泉へ宿泊して翌日に取材。登山口から頂上まで延々と樹林帯が続く山で、アップダウンも乏しく、写真が見栄えするポイントを探すのに苦労しました。
しかも頂上に着いたときは青空だったものの、シャッターを切る前にまずは一口と水を飲んだら、そのわずか2~3分の間に雲がかかってしまったのです。
その後は30分近く山頂で待機したのですが、空が晴れる気配はなく、諦めて下山。山の取材の難しさを、痛感させられました。

039 栃木県・高原山(1795m)

最高峰の釈迦ヶ岳と、古くから信仰の対象だった鶏頂山の2つの頂上を持つ山で、鶏頂山の参拝道だった西口登山道を取材しました。
しかし東側のコースのほうがアクセスはよく、初夏には数多くの花が咲いて爽快です。
ページの都合で1コースしか掲載できないのですが、本当は両方のコースを紹介したい山でした。

044 茨城県・八溝山(1022m)

茨城県の最高峰で、福島県との県境にある山です。取材に出向いたときの天候は雨だったため、再度取材に出向いたのですが、その日も予想以上に雲が多くて、思うような写真は撮れませんでした。
仕上がった本では、主に東北で活動されているガイドの奥田博さんにも写真を提供していただいて、ページを構成しています。

045 茨城県・男体山(654m)

茨城県と福島県にまたがる奥久慈地方にそびえる山で、奥久慈男体山とも呼ばれます。
ここは最初の取材時は、途中から大雨になって山頂に立たずに下山。2度目は春に、紹介したコースから頂上へ。さらに別コースも調べたいと思い、秋に3度目の取材に向かいました。
低山ながらも岩場が多く、何度登っても飽きない面白い山だと思います。

047 茨城県・佐白山(205m)

笠間焼と呼ばれる陶器の産地にある山で、限りなくウォーキングに近いコースです。
しかし笠間稲荷神社、佐白山正福寺、笠間つつじ公園、笠間城跡と見どころは多数。
さらに山頂部に点在する露岩は、「笠間ボルダー」と呼ばれるボルダリングの対象です。おそらく登山者よりも、クライマーのほうが頻繁に訪れている山でしょう。

083 東京都・三原山(749m/剣ヶ峰)

伊豆大島は伊豆諸島最大の島で、東京港からも近く、私は何度も訪れています。三原山にも何度も登っているのですが、海の上の独立峰であるためか、山頂部が雲に覆われることがほとんど。
そのため、手元にもあまりすっきりとした写真はありませんでした。
とはいえ再度取材に行くほどの時間はなく、手持ちの写真でページはまとめました。
海から見た晴れ渡った姿の写真は、伊豆大島ではなく、神津島に行った帰りに撮影したものです。

090 神奈川県・蛭ヶ岳(1673m)

5月下旬に、ミツバツツジが見頃を迎えたとの情報を得て、慌てて取材に出向いた山です。満開のピークはほんのちょっとだけ過ぎていましたが、空はすっきりと晴れ渡り、明るい写真を撮影することができました。
このとき宿泊した蛭ヶ岳山荘のご主人に、秋の紅葉も写すことを勧められたのですが、その年(2018年)の秋は雨が多くて、取材に出向く時間を作ることができなかったのが心残りです。